平成6年10月3日 鎌倉朝日 (8)
グロリア少年合唱団
カナダ演奏旅行記
児島百代
八月十六日 朝六時半、カトリック雪ノ下教会のガラス張りホールには心配そうな両親に付き添われた小・中・高の団員が集まった。小中学生の世話を任された高校生の班長たちの緊張した表情にこの遠い旅の責任の重みが読み取れた。厳粛な表情で聖堂に入る少年たちと指導者、父母たち。
フォールテン神父の祈りの声には、この演奏旅行のためにカナダへの連絡やフランス語の訳など、グロリアのために働いてくださった神父の、大きな期待が込められている。
午前七時出発。二台のバスには少年合唱団(小学校四年生から高校三年生)五十二名、指導者と男声合唱団十七名、グロリア出身の鈴木敬一神父、ソリストとオーケストラ十三名。成田から十一時間シカゴ経由の空の旅は始まった。
モントリオールの宿はノートルダムカレッジ学生寮――高くそびえるヨハネ大聖堂の真向かいにあった。八月十七日 午前中市内見学。どこに行っても大聖堂の大きさ壮重さには驚かされる。午後アルフォンソ教会で練習。オランダから加わった五名(日本人一名、オランダ人二名、英国人二名)と共にヘンデルのメサイアが始まる。
ボーイソプラノはどうしてこんなに教会の響きと相性が良いのだろう。高い天井から天使の声が降ってくる。指揮はグロリアの団長でもある松村努氏――実にカッコよい。八月十八日 午後八時からメサイア演奏会。思うように客は集まらなかったが、聴き終わった客は皆感動し、全員立ち上がって拍手は鳴り止まなかった。
八月十九日 モントリオールからサンタナドボープレへ。そびえる聖アンナの大聖堂を中心にしたこの巡礼の町は、全世界から集まった巡礼者たちで溢れていた。行き交う老若男女、車椅子――宿は巡礼者たちの専用ホテルだ。
八月二十日 地下小聖堂で小コンサート
八月二十一日 大聖堂で歌ミサ。祭壇中央階段に白い侍者服の団員とソリストが並び、その前に十七人のオケが陣取り、モーツァルトのミサブレビスでミサは進む。ミサの終わりに「あめのきさき」を歌い始めると、向かい合った大聖堂の会衆の間から世界各国の言葉でこの歌の大合唱となった。
終わると拍手が沸き上がり、司祭のすすめでアンコールに「ハレルヤ」を歌い、更に「アーメンコーラス」を加えた。「遠い日本から素晴らしい歌ミサを捧げて下さった皆さんにみんなで日本語でお礼を言いましょう」!!司祭の呼びかけでア・リ・ガ・ト・ウと数千人の巡礼者の声がこだました。私たちは感動の涙を抑えることは出来なかった。八月二十二日 空路トロントへ。近代都市トロントでも緑の多いセントマイケルズカレッジ寮で三泊。セントパトリック教会でメサイア演奏会。旅の終わりにナイアガラの滝を見学して、二十六日午後八時鎌倉の教会に帰着した。
トロントで別れた外国人のオケメンバーが、別れを惜しんで団員のバスの脇を走って手を振っていた姿も、団員の心に深く刻まれたことだろう。
少年たちがこの国際的経験を生かして、将来の日本を背負ってくれるよう祈っている。(グロリア少年合唱団指導顧問・北鎌倉女子学園音楽主事)